畑のある暮らし

とうかげん

『とうかげん』という屋号に「畑のある暮らし」という言葉を付け加えたのは、就農してしばらく経ち、野菜セットの配達を始めてからのことでした。

京都市のすぐ隣で、大阪にも容易に行ける亀岡という場所は、自分で野菜を配達するには適した場所でした。季節の野菜を10種類前後、コンテナに入れて軽トラで個人宅に配達するというスタイルはとても面白く、毎週毎週お届けする人と話ができるのが楽しみでした。そうしているうちにふとおもうことがありました。

もともと、この野菜の宅配というやり方は農業研修先で知りました。それまでは、実際畑で栽培した野菜をどう販売していけばいいのか具体的にイメージできていませんでした。研修先で実際に配送作業を体験し、毎週あるいは隔週で話をして野菜を届けることの楽しさを知りました。その研修先では研修生の自主性を尊重してくれたので、独立以降を想定していろいろ実験的な試みを多数させてもらいました。あんまり意欲的にやったので行き過ぎを注意されることもありました。

30年以上の歴史があり、研修生も当時7~8人いたその研修先では、毎週100セット以上の野菜セットの他八百屋さんなどへの出荷も通年行っていました。独立してたった一人でイチから畑を始めて痛感したのは、農閑期まで終わることのない作業量の多さと端境期の難しさでした。研修で学んでいたとはいえ、新しい場所・新しい畑で作付け計画も手探りの状態でした。当然研修先で届けていたような立派な野菜セットは端境期には届けられません。それどころか、突然の獣害などのトラブルなどがあれば作業がストップしてしまうことはしばしばありました。

「家族に安心して食べてもらえる野菜を届けたい。」と思い、そう伝えながら配達をしてはいたものの、単に「野菜を届ける」という面を見ると十分とは言えないように思えました。かといって、一人でやっている以上、どんなに頑張っても不確定要素への対応も考えると限りがあるのが見えてきました。じゃあどうしていけばいいんだろうと考えながら過ごしていると、「暮らし」というキーワードが浮かびました。

野菜を届けていた人たちは、もちろんおいしい野菜が届くのも喜んでいましたが、僅かな時間でも受け渡しの時に伝える畑のことや季節の話も同時に楽しんでくれていました。僕の思い込みでなければ。「そうか。野菜を届けるということを通して、畑や季節のことを届けていけばいいんだ。『畑のある暮らし』を届けていこう!」そう気づきました。それからは、吹っ切れたようにいろいろ試していきました。出荷にはあまり関係ない豆や麦も植え始め、種採りの種類をどんどん増やしていきました。トラクターを手放して、鍬で畑と向き合い始めたのもこの時期です。「畑のある暮らしの面白さを伝えたい。」今から振り返るとまだまだヒヨッコだったけれど、熱意は認めてやりたいです。

それが、どれくらい伝わっていたのかは分かりません。でもそれから10年ほど経ち、今では「暮らし」というテーマがとうかげんの大きな柱になっています。そして、農家民宿も始めることになり、とうかげんの「畑のある暮らし」を体験してもらえる場までできました。このテーマは終わりのないものですが、ただそこにある楽しさ・面白さを感じてもらえたらうれしいです。

お宿 とうかげん https://toukagen-hatakenoarukurasi.webnode.jp/%e5%ae%bf%e6%b3%8a/

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