2013年3月2日金曜日 大阪市内のカフェ、凝った内装で雰囲気のあるお店でした。テーブルの向かいにはおしゃれな服装を着こなして、お化粧もバッチリ、明るく朗らかに話してくれる女性が座っていました。大阪市内の配達が終わってからの待ち合わせだったので外はすっかり暗くなっていました。窓ガラスを背にして明るい店内で楽しそうに話す彼女は、それはそれは華やかに見えました。
2013年に入ってから、なぜか僕に身を固めるように勧めてくれる人が相次いで現れました。今回の会食も、前から親交のある陶芸家の先生の紹介で実現することになりました。大阪市内に住む彼女は一度畑まで遊びに来てくれ、僕が大阪方面にも配達に行っていることを知り、「一度食事でもしましょうか。」という流れになりました。
若い女性と2人きりでお店に行くことなど、数えるほどしか経験が無かったので、楽しいとは思いつつ半分ぼーっとして話していました。食事をしながら小一時間ほど話して別れました。内気で引っ込み思案な僕には十分すぎるほど刺激的な時間でした。
亀岡市旭町まで帰る車中、さっきまでのことをぼんやりと思い出しながら、いろいろ考えました。その時どんな会話をしたかはもう覚えていません。ただ、毎日畑で過ごしている自分と街中で暮らしている彼女との間にある、何とも言えない価値観の違いを感じたことだけが記憶に残っています。
「何だか住む世界が全然違うみたいだったなー。やっぱり僕には結婚は難しいな。とりあえず、明日の『ノーカトーク』がんばろ。」
結婚してから半年ほど経った頃、まきさんからこんな話を聞きました。2013年3月2日夜、京都市内で、まきさんも知り合いの紹介で、ある男性とお見合いをしていました。しっかりした所に勤めている好青年だったとのこと。しかし、結局その方とのお話はお断りしたそうです。しかも、3月10日に初めてとうかげんの畑に来る前に返事をしたと言います。
「え、何で!? そっちの方が良くない? 安定してるし。 せめてうちに来てみてから返事しても良かったやん。」初めてその話を聞いた時、僕の方がびっくりして、つい打算的な意見を言ってしまいました。
2013年3月3日、まきさんがヒライタカヒコを発見する前の日、お互い同じくらいの時間に別の場所で、お見合いのようなことをしていたということです。そして、お互いその相手に対する違和感を感じながら家路についていました。
3月3日に物語が始まったと思っていました。しかし本当はその前日から、もしかしたら、もっともっと前から始まっていたのかもしれません。